MELTY BLOOD

MELTY BLOOD
-Re・ACT-

■ストーリーモード■

3/夜にその名を呼べば
Around and Alone

Hルート


遠野志貴
「やったか――――!?」


アルクェイド
「―――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――」


「まいったなあ。まだ確定していないわたしを消
してしまえるなんて、とんでもないフライング。
志貴ってここまでデタラメだったんだ」

「けどこれも無駄な事よ、志貴。わたしを殺して
まだ無意味だもの。

 それにね、いくら例外だからってあんまり玩具
は見せびらかさない方がいいわよ? ネタが割れ
てしまえば只の人間である貴方なんて、瞬きだけ
で殺せてしまう」

遠野志貴
「言われるまでもない。そんな事は先刻承知だ」

アルクェイド
「そう? なら良かった。それじゃあね、二人と
も。次に私になった時は簡単に殺してあげる」

遠野志貴
「消えた……いや、それよりシオン……!」

「シオン、大丈夫か!?」

シオン
「触らないで……!」

遠野志貴
「いや、けど……」

シオン
「私には、触らないように、と言った筈です」

遠野志貴
「…………………」

シオン
「心配はいりません。アレが消えたのなら倒れる
事もないのですから」

遠野志貴
「……君がそう言うんならいいけど。体の方は痛
まないのか」

シオン
「それは志貴が考える問題ではありません。志貴
が優先すべき事は、私ではなく先程の吸血鬼の事
でしょう」

遠野志貴
「……そうだな。それじゃあ訊くけど、今のアル
クェイドは何者だったんだ。シオンやアイツは偽
物だって言ってたけど、どう考えてもさっきのは
アルクェイド本人だった。


 アイツはアルクェイドの顔で五人も殺して……
って、あれ? あれれ!?」」

シオン
「人間の死体などありませんね。散らばっている
のはゴミ袋とその中身だけです。
 ……まあ、遠目から見れば動物の死体に見えな
い事はありませんが」


遠野志貴
「な、なんで!? さっきは確かに人の死体だっ
たし、血の匂いだってしてたんだぞ……!?」

シオン
「錯覚ですね。“公園には通り魔が現れる”とい
う噂に惑わされただけでしょう。
 それが先程の真祖――いえ、タタリと呼ばれる
死徒の正体です」

遠野志貴
「え? さっきのアルクェイド、タタリって言う
ヤツなのか?」

シオン
「……ええ。噂を現実の物にする死徒。否、人々
の噂を利用して強力な姿を纏う吸血鬼。

 今、この街に広まっている噂は異常です。人々
の間で広まり、誰もが真実味を感じる疑似情報。
これが普遍性を持った時、タタリという死徒は現
れます。いえ、発生してしまう。

 タタリとは本体に主体性はなく、あくまで人間
の不安によって沸き立つ蜃気楼のような物ですか
ら」

遠野志貴
「……? ごめん、ちょ―っと全然解らないんだ
けど、シオン」


シオン
「少し、全然解らない、ですか。
 私にはその発言が解りませんが、まあ不問にし
ましょう」

「端的に言ってしまえば、タタリという死徒はカ
タチがなく、人々の噂が“現実になっても誰も疑
わないモノ”になった時、そのカタチになるので
す。

 この街の人々は金髪の女性が通り魔かもしれな
い、という噂を信じ、

 アルクェイド・ブリュンスタッドという吸血鬼
を知っている志貴は、その噂を否定しながらも否
定できない事を怖れた。

 広まった噂と、事実を知る志貴 にんげん が抱いた不安。
それらを回収して、タタリはアルクェイド・ブリュ
ンスタッドになったのです。

 ……先程のタタリは真祖の偽物ではありました
が、真祖そのものでもあります。少なくとも遠野
志貴という人間にとっては本物以外ありえない。

 志貴は真祖が吸血鬼のようになるのが厭だ、と
思ったのでしょう? 街に現れている吸血鬼は真
祖の偽物だ、とは思わなかった。

 だから先程のタタリは、志貴が不安に思った通
りの“吸血鬼になってしまった真祖”なのです」

遠野志貴
「……なんだよ、それ。俺はそう不安に思ったか
ら、アイツが現れたっていうのか」

シオン
「タタリ、とは祟り、ですから。
 人間の自らが作り出した盲信によって滅びるで
しょう?

 タタリとは人間が生み出した不安に成る事で自
己を存続させている死徒。

 そして人々が思う“不安”だからこそ、タタリ
を生み出した人々にはタタリに抗う術がなく、悉
くタタリに血を吸われる事になる。

 ……先程のタタリはまだ成りきっていなかった
ようですね。志貴一人の不安では真実の裏付けは
できても普遍性が足りなかった、という事でしょ
う」

遠野志貴
「……言葉だけじゃよく飲み込めないけど、よう
するにタタリってヤツはみんなのイメージ通りの
力を持つって事だろ。

 なら、アルクェイドじゃなく、もっと他の出来
事をみんなが不安に思ったらどうなるんだ」

シオン
「無論、その姿で現れます。
 ……タタリという死徒に実体は存在せず、タタ
リは現れる毎にその姿が変わっている。

 過去で計測された最大のタタリは、山一つほど
の巨大な獣神だったそうです。

 もっとも、それは人々がいまだ闇を怖れていた
時代の話。現代で発生するタタリはそこまで圧倒
的なモノはありません。

 ですが、今回のタタリが真祖の姿で固定してし
まうのなら、それは過去最凶のタタリとなるでしょ
う」

遠野志貴
「そ、そうなのか!? いや、確かにアルクェイ
ドのヤツが見境なくなったらそりゃあ手に負えな
いけど……うわ、どうするんだよそれ!」

シオン
「どうしようもありません。そもそもタタリが完
全に発生してしまった場合、タタリを生み出した
地域は滅びるのは当然でしょう。

 それがどのような規模のタタリであれ、タタリ
は人々の思った不安が具現したもの。不安に思っ
ているモノなのですから、対抗できる筈がない」

遠野志貴
「う……それは分かったけど、なんだってそのタ
タリが俺一人の不安で出来ちまうんだよ。

 みんなが不安に思わないといけないんなら、俺
一人がアルクェイドが吸血鬼ではありませんよう
に、と思っても影響はないんじゃないのか」
シオン
「いいえ。ある意味志貴は中心にいるのです。タ
タリの目的は、つねにその地域で最悪のイメージ
に成る事。ですから志貴の不安がタタリになる可
能性は高い」

遠野志貴
「だーかーら、どうして俺なんだって言ってる」

シオン
「志、志貴は真祖と最も関わりのある人間ですか
ら。真祖の寵愛を一身に受けているのだから、こ
の街では二番目に重要視されています」


遠野志貴
「真祖の寵愛って……なんか凄い響きだね、それ」

シオン
「そうですね。私も、少し言葉を選ぶべきでした」

遠野志貴
「―――――」

シオン
「―――――」

遠野志貴
「―――――――――」

シオン
「―――――――――」

遠野志貴
「――――――――――――」

シオン
「――――――――――――」

遠野志貴
「と、ともかく! そう思うのはシオンの勝手だ
けど、なんだってそんなコトで俺がタタリってヤ
ツに重要視されなくちゃいけないん」

シオン
「志貴が真祖をよく知っているからでしょう。
 それ以外にも、志貴は実際に吸血鬼を知る人間
です。

 真祖が吸血鬼に成り下がる、という不安が稀薄
でも、貴方にはまだ吸血鬼に纏わる不安がある」

遠野志貴
「吸血鬼に纏わる不安―――例えばネロのヤツが
生きていたら、とか、シエル先輩が秋葉とケンカ
したら嫌だな、とか……?」

シオン
「ええ。それらも実現化する可能性は高いですね。
無から有を作るより、有を害に変える方がより祟
りに相応しい。

 タタリは“呪い”をカタチにして使い魔にする
死徒、と仮定して下さい。

 この場合、タタリ自身が暴走した真祖になるよ
り、もとからいる真祖に取り憑いて暴走させた方
が効率がよいでしょう?

 加えて、志貴の不安というイメージは他の誰よ
りも明確です。実際に多くの吸血鬼を見てきた志
貴のイメージは、“見たこともない”吸血鬼を想
像する街の人間より何倍も優れている」

遠野志貴
「……じゃあ、さっきのタタリを倒しても、次は
シエル先輩とか秋葉の姿で現れるって事?」

9:33

「―――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――」

「………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………」

「――――――――」

ひとけ
遠野志貴 vs. アルクェイド


勝利
H 夜にその名を呼べば

敗北
I 七夜を名乗る

戻る