遠野志貴

1戦目4戦目 8戦目 9戦目 エピローグ
シオン暴走アルクェイドリーズバイフェオシリスの砂-

登場
1戦目 vs.シオン


(遠野志貴)
「八月初頭。」

「交通量一時間あたり平均五台。
JR使用者一日推定百人前後。」

「気温、摂氏三十八度。」

「――――その夏。
あまりに息苦しい暑さに、
窒息するサカナみたいと誰かが言った。」


遠野志貴
「……夜の街に現れる吸血鬼、か……。
まだ噂の段階だけど、本当に犠牲者がでる前に
なんとかしないと。」

シオン
「やめておきなさいと遠野志貴。
これは貴方の問題ではない。リスクを負うのは
私の役割だ。」

遠野志貴
「(いつのまに後ろに……!?)
って、シ―――あれ?」

「君、は―――あれ?
たしか、昨日秋葉と一緒に―――?」


シオン
「……やはり。」

シオン
「私に関する事だけ、記憶野から引き出せないように
なっている。貴方にとって今夜は、ワラキアの夜の
一日目なのですね。」

遠野志貴
「え―――その、君は誰だ?
っ……頭痛が酷くて……悪人でないのは、
分かるんだけど―――」


シオン
「……貴方が苦しむ事はありません。
このタタリは私が消し去る。志貴。貴方は
しばらく、ここで休んでいてほしい。」

遠野志貴
「っ……!
ちょ、やっぱり拳銃―――じゃなくて、
なんで拳銃なんて持ってるんだ君ーーー!?」



勝利時
「はあ、なんとかなった……琥珀さんに連絡して
この娘を介抱してもらわないと。
……わるいね、この件が片づいたらきちんと
謝るからさ。」



4戦目 vs.暴走アルクェイド

遠野志貴
「アルクェイド、来てるかな……。
ここで待ち合わせの約束だったけど、あいつ最近、
よくすっぽかすからなあ……」

暴走アルクェイド
「あら。遅刻魔で約束破りの化身みたいなアナタに
言われたくはないんですけど?」

「今夜だってただの逢い引きだったのに。
ナイフを持ってやってくるなんて、猟奇的にも程が
あるじゃない?」

遠野志貴
「っ―――! おまえ、誰だ……!
アルクェイドじゃないな……!?」

暴走アルクェイド
「もちろん。あんな反則と一緒にしないで。
私はあいつが切り捨てたのこ血衝動りカスよ。」

「この固有結界の中でカタチを持っただけの、
夜が明ければ消える幻。」

「でも、どうなのかしらねぇ?
あいつが死んで死んでしまえば、本物としてずっと
残っていられるのかも。」

「そうしたら―――アナタを私の物にしてあげても
いいわよ? 反則同士仲良くしていたみたいだし、
私も真似事ぐらいはしてあげる。」


「もっとも、その眼以外はいらないから、
首から下は面白いカタチになっちゃうだろうけど!」

遠野志貴
「―――ああ、付き合おう吸血鬼。
おまえは元凶じゃないようだけど、あいつの姿を
これ以上血で汚されるのはたまらない。」



勝利時
「―――消えたか。
……おかしいな……これと同じ出来事を覚えている
気がする……一晩だけ噂や不安をカタチにする
二十七祖……名前は、たしか……」



8戦目 vs.リーズバイフェ

リーズバイフェ
「立ち去りなさい。
異能を持っているようだが、この先は君のような
善良な人間が踏み入る場所ではない。」

遠野志貴
「そう言われて帰れるんなら、こんな所までやって
こないさ。」

「……けど。君は、新顔だ。まだ頭痛がするけど、
それだけははっきりと判る。」

リーズバイフェ
「……さすがワラキアの夜を“殺した”少年。
なんの魔術も使わず、この固有結界に亀裂を生むか。」

「すまないが、立ち去れ、というのは反故だ。
その禍々しい眼と共に、しばしここで眠りなさい。」



9戦目 vs.オシリスの砂

遠野志貴
「なんだこの地面―――血……じゃない……
これ、全部宝石だ―――」

オシリスの砂
「それは賢者の石と呼ばれるもの。
タタリを用いて私が練成した冥界の砂。」

命の水アクア・ヴィタエとも呼ばれる、あらゆる苦痛、あらゆる病、
あらゆる死を癒す、アトラスの最秘奥である。」

遠野志貴
「おまえ……いや、君は―――シオン―――
そうだ、シオンだ……!」

オシリスの砂
「………………」

遠野志貴
「どうして今まで忘れていた?
この夜はタタリの夜で、俺はシオンと一緒に、
タタリの元凶を倒したのに……!」

オシリスの砂
「……この姿であっても、私を私と認識するのか……。
確かにおまえは、最大の特異点のようだ。」

遠野志貴
「シオン……?
どうしたんだ、何かあったのか?」

「ひどく苦しそうだけど、
俺が来る前にタタリにやられたのか?」

オシリスの砂
「……その、人を傷つけない愚鈍さを、
まさか私も実体験するとはな。」

「……あらゆる意味で許せない。
私をシオン・エルトナムとして見た事。」


「ここにいたって、私がタタリである道理を
捨てられるその善良さこそが、私の敵だ。」

遠野志貴
「っ―――!
……なんだ……眼、が―――この石は、
死の線だけで―――できている……!?」

オシリスの砂
「ここはワラキアの夜を再演算し、その結果だけを
変えようとした私のタタリせかい。」

「真祖に世界の果てを降ろさせ、おまえにワラキアの夜
を消去させ―――タタリが消え去る前に、その結果
だけを変動させる。」

「そのどれもがおまえという特異点がなければ
成しえない変革だったが―――」

「変動する数値であるおまえがいるかぎり、
私という解答もいまだ定まらない。」

オシリスの砂
「貴方は私を生み出す要因であり、私を消し去る要因。
今、タタリは冥界の鳥を作り上げた。」

「この鳥が正しい解に消される前に―――
貴方が消えれば、私がただ一人のシオンとなる。」

遠野志貴
「―――シオン。
今の君はさっき出会った君とは違う……
タタリが生み出したシオン、なのか?」

オシリスの砂
「その解釈でいい。
私はオシリスの砂。おまえを殺し、この世界を
真実として未来を変革する演算機。」
※演算器の誤字


「消えろ人間。この冥界に、死神は必要ない!」



エピローグ

遠野志貴
「―――夜明けだ。
頭痛もなくなったし、街を覆っていた異様な熱気も
消えた……これで本当に、タタリは終わったんだな。」


シオン
「ええ。私が解決すべき問題でしたが、志貴が一人で
終わらせてくれました。」

「……志貴にとっては納得のいく解決ではなかった
でしょうが、彼女にとっては、これが一番幸福な
終わりだったのかもしれません。」

遠野志貴
「―――そうなのかな。
自分をタタリだって言っていたシオンは、なんて
いうか……すごく、寂しそうだったんだけど……」

シオン
「はい。……だからこそ、貴方の手で破壊されたのが
救いだったのです。」


「彼女が何者であったのか。このタタリがなんで
あったのかは、もう貴方には関わりのない事だ。」

「……でも、できれば。貴方が感じたままの彼女を、
どうか覚えていてあげてほしい。」

遠野志貴
「ああ、それはもちろん。
ま、シオンも大人になったああなるんだって
分かったし、そう簡単には忘れられないよ。」


シオン
「っ、あの状況でそんなコトを考えていたのですか
アンタは!」


「前言は撤回です、忘れなさい、大人になった
私のコトなど忘れなさいっ!」

遠野志貴
「うわ、ちょっと待て、落ち着けシオン!
銃、銃を持ち出すのはナシだってばー!」



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