シオン・エルトナム・アトラシア

1戦目4戦目 8戦目 9戦目 エピローグ
弓塚さつきワラキアの夜リーズバイフェオシリスの砂-

登場

シオン
「……異常な術式の予兆……消え去った筈の
ワラキアの気配……、もう一度
タタリが起動しているのは確かなようですね。」

「……志貴や真祖たちは気づいていない……いや、
異常を察して解決に乗り出していますが、一体なにが
異常なのか、そこを間違えてしまっている……」

「みな、ワラキアの夜というタタリを解決する為に
動いている……そんなもの、とうに滅び去った事を、
この夜だけ忘れている。」

「これでは再来ではなく再演だ。
二度目の上映である事に気づけるのは私だけ……」

「……志貴に助力を求めては、それこそ何者かの
思惑通りだ。」

「私は一年前とは違う方法で、このタタリを解決
しなくては―――」



勝利時
「……さつきまで襲ってくるとは……今回のタタリは
以前よりたちが悪い……と、ここに隠しておけば
安全だ。それでは行ってきますねさつき。
しばらく眠っていてください。」



4戦目 vs.ワラキアの夜

シオン
「なっ……この森は三年前に滅ぼされた村……
私とリーズバイフェがタタリに破れた、あの―――」

ワラキアの夜
「いかにも。急ごしらえの舞台装置だが、気に入って
いただけたかなシオン?」

「ここは記念すべき祭りの場。君の終わりと新生を
飾った、葡萄酒に満ちた復活祭イースターだ。」


シオン
「ズェピア……ようやく出会えた、と言いたいところ
ですが―――」

ワラキアの夜
「うん? おかしいな、この光景を前にした君は
理性を裂かれ、高らかに泣き崩れると筋書きには
あるのだが―――」


「……つまらない。動員数が一桁だ懸けた予算と
感動の比率が合わない少ない乏しい不愉快なほど
オーディエンスが足りないじゃあないか!」

「まったく、これはどうした事だ!
ノリが悪いにもほどがある!」

「お嬢さん。 君は本当にシオン・エルトナム・アトラシアかね?」

シオン
「それはこちらの台詞だワラキア。
地に落ちたのは私ではなくそちらだろう。」

「このタタリにおいて、貴方は完全に、私に倒される
だけの端役になりさがっている。」



勝利時
「……ワラキアの夜は自分を主催者と疑わない幻影
だった……では、このタタリを引き起こしたのは
何者だ……?」



8戦目 vs.リーズバイフェ

シオン
「そんな、貴女は―――リーズバイフェ!?
あ、貴女が生きている筈が―――」

リーズバイフェ
「……そうだな。私も、自分がどうして生きているのか
分からない。けれど、君なら私が何なのか、解析して
くれるのではないか?」

シオン
「あ―――いや、けれど。
そんな、残酷な、事を。」

リーズバイフェ
「……心を許した相手へ気を回しすぎるのは、
君の悪い癖だよシオン。」

「いいんだ。私だって漠然と気づいてはいる。
自分がどんな状態なのか、ぐらいはな。」


シオン
「リーズ―――。」

「……すまない。三年前の結末と、いま起きている
タタリの再演。……導き出される可能性は
とても少ない、そして、」

リーズバイフェ
「すべてが悪いバッドニュース、という事か。
……うん、だからいいんだって。」

「シオンには内緒にしていたけど、私、そういうの、
あまり気にしないから。」

「今のは救ってほしいから訊ねた事じゃない。
君がきちんと自分の役割を承状できるよう、
声にして訊いた事だ。」

シオン
「―――では。
やはり貴女は、このタタリの防衛機構なのですね。」

リーズバイフェ
「そう、正解。」

「じゃあ行くよシオン。
大人しく立ち去るのなら追いはしない。
だが、この先に踏み込むというのなら―――」

シオン
「…………戦う。それしかないのですか、リーズ。」

リーズバイフェ
「無論。我が名はリーズバイフェ・ストリンドヴァリ。
君の守護を任された騎士として、この聖盾にかけて、
その体を貫こう。」



勝利時
「―――予測通りだ。今ならまだ間に合う。
待っていてくださいリーズ。この夜が明ける前に
タタリを消去すれば、貴女はそのカタチのまま
残れるはず―――!」



敗北時
「……私の勝ち、か。
君ならばとも思ったが、私を倒せないようでは
オシリスに敵う筈もない。……いや。
アレと出会わずに消える方が、君にとっては幸福なんだろうね、シオン。」



9戦目 vs.オシリスの砂

オシリスの砂
「―――死体が動いている。
死に瀕していながら、いまだ人間を維持するとは。」

「自らの思考の糸で操る生き人形。
糸を断ち、速やかに消え去るがいい。」

「その個体の目的は、ここに到達した時点で
果たされた筈だ。」

シオン
「……たしかに。かつての私なら、最終的に“コレ”を
目指したのでしょうね。それが果たされている
のなら、私に生存の意味はない。」

「他人の手であろうと目的が叶ったのなら、
自らの手で消えるのが最も効率のいい選択だ。
だが―――」

「―――消え去るのはおまえの方だ、
シオン・エルトナム・アトラシア。」

「いや。その状態の私では、そんな名前に執着はない
のでしょうね。」

オシリスの砂
「そうだ。私は二十七祖の一角。
冥界を実現させるタタリ、オシリスの砂。」

「三年前、ワラキアの夜によって飲まれた、
シオン・エルトナムの“人間の命”。」

「それがタタリの機能を制圧し、ワラキアの夜より
上位に移動したものだ。」

シオン
「……かつてワラキアは吸血鬼化を死の病といった。
私はヤツにかまれた時点で、吸血鬼として新生した。」

「その時に奪われた私が、タタリとして新生したのが
おまえか。」

オシリスの砂
「おまえはカラが吸血鬼として生を受けたもの。
私はカラを亡くして人間のままタタリの中で
過ごしたもの。」

「どちらもシオンの残骸。
死者の王であり、ともに同じ結末を求めている。」

シオン
「……同じ結末か。
念のために訊いておきますが。
貴女が求める結末とはなんですか。」

オシリスの砂
「同じ貴女なら、言葉にするまでもなく
分かっている筈だ。」

シオン
「……やはりそうきましたか。
ふん。演算機としては正しいのでしょうが、
知識としては三流ですね。」
※演算器の誤字

「申し訳ありませんが、こちらの私は進化しました。
今の私はもうそう悲観には至らない。」

「私は超越者ろしてではなく、当事者として
このやまいと向き合うと決めたのですから。」

オシリスの砂
「……それは退化だ。
あきらかに、生命の基準を下げている。」

シオン
「いいえ。もとからある機能をなくしてでも、
今の環境にあわせてより最適化していく。
これを進化と言うのです。」

「私に生まれた新しい感情は、たしかに
シオン・エルトナムの性能を下げました。」

「けれで、その代わりに新しい未来を手に入れた。
貴女では持ち得ない、希望に満ちた結末の夢を。」

オシリスの砂
「……そうか。愚かだが、否定はしない。
ただ消え去るがいいシオン。」

「冥界の砂は十分に機能を果たせる。
今更、残骸である貴女にも、バレルレプリカの
助けもいらない。」

シオン
「望むところだ。私たちはどちらも三年前の私では
なく、新しい道を歩いている。」

「どちらがシオンの残骸なのか―――それは、この
戦いの結果が示すだろう!」



エピローグ

リーズバイフェ
「ん……ここは……シオン?
私は……まだ残っている……の?」


シオン
「はい。貴女はこの三年、タタリの一部では
ありましたが、リーズバイフェのまま分解されずに
組み込まれていたのです。」

「今夜のタタリ―――オシリスの砂が明ければ、
再びタタリの中に戻される。
その前にタタリを破壊すれば、あるいは、と。」

リーズバイフェ
「……なんだ。コンサート会場がつぶれて、
たまたま外に出ていた私は助かった、という事……?」

「けどシオン。
それでも、私は消えるんじゃないかな……」

「だって私を生かしていたのは、
そのコンサート会場だったんだもの。」

シオン
「はい。ですから、今は私が、
貴女のコンサート会場なのです。」

「オシリスを破壊した後、彼女から貴女の所有権を
回収しました。」

「……タタリの真似事になってしまいますが、
私の分割思考の内二つを振り分ける事で、
貴女をとどめているのです。」


リーズバイフェ
「……えーと……じゃあ、私は貴女の機能の半分を
食いつぶして生きているの?
常駐ソフト?」


シオン
「驚いた。貴女の口からそんな単語が出てくるとは。
……というか。今、貴女の電源になってようやく
分かったのですが……」

「リーズ。
貴女ってホントはものすごくずぼらで、面倒くさがり
屋で、後先考えない、困った人だったのですね。」


リーズバイフェ
「あっちゃあ。バレたか。」

「でも、それは周りが勘違いしていただけで、
嘘はついてないんだけどな……シオンは、
私の本性がわかって幻滅した?」

シオン
「まさか。……まあ、多少は幻滅しましたが、
百年の恋がさめる、というものではありません。」

「だいたい、前々からおかしいとは思っていたのです。
もしかして貴女は迷いがないのではなく、
単に明日の事を考えていないだけではないか、と。」

リーズバイフェ
「うん、そう。私、シオンと違って未来の事を考える
のは苦手なんだ。」

「今があればいいって性格でね。なんか、それが
達観しているように、周りには見えたらしいけど。」

シオン
「見えました。もう完全に騙されました。
……あ、違いますね。貴女に欺く気なんて、
これっぽっちもなかったですから。」

リーズバイフェ
「……うん。
それで、どうする?
シオンは私をどうしたい?」

シオン
「―――貴女はもう私の物です。」

「教会には渡しません。……だいたい、私の分割思考を
二つも占領しているのですから、それに相応しい
仕事をしてもらわないと。」

リーズバイフェ
「そうか。うん、それでいこう。
教会から離れるのは残念だが、誰かを守るという
仕事が変わらないのなら、嬉しい。」

シオン
「契約成立ですね。
では行きましょうかリーズ。」

「まずは、この街で知り合った友人たちに
貴女を紹介しなくては―――」



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